どんぐりと山猫 「裁判ももうけふで三日目だぞ。いい加減になかなほり したらどうだ。」 「いえ、いえ、だめです。あたまのとがったものが…。」 がやがやがやがや。 山ねこが叫びました。 「やかましい。ここをなんとこころえる。しづまれ。しず まれ。」別当がむちをひゅうぱちっと鳴らし、どんぐりは みんなしづまりました。山ねこが一郎にそっと申しました。 「このとほりです。どうしたらいいでせう。」 一郎はわらってこたへました。 「そんなら、かう言いわたしたらいいでせう。このなかで いちばんばかで、めちゃくちゃで、まるでなってないやうな のが、いちばんえらいとね。ぼくお説教で聞いたんです。」 宮沢賢治 |